『FishCampLife北海道~四季のキャンプとマス釣り旅~』
こちらはガイド用サイトなので、
ゲスト向けの解説をしようかと思います。
ちなみにこの最初の写真は、表紙写真候補のうちに一枚。
マスの泳ぐ川辺でキャンプをする、というイメージでした。
表紙の袖と呼ばれる、折り返しに使用されました。
最初から最後まで通して、一冊の釣り本として完結させてあります。
本分を季節ごとに区分けしましたので、
おそらく北海道の全体像を把握しやすく、
分かりやすくなっているはずです。
とはいっても、著者の好みが反映されてはいるのですが。
総ページ240のうち、冒頭のまえがきとグラビアページは、
本のいわば”総論”です。
マス釣り、フライフィッシング、キャンプが、
それぞれ、どのような効果や機能を我々にもたらすのか、
そんな総論となっています。
第二章からは、各エピソードの中に総論で展開したトピックを
具体的なストーリーやテクニック、エピソードで
その効果や機能を表現した、ということになります。
各論に当たる初夏以降のエピソードにはもちろん、
それぞれ完結しています。たとえば
季節を追って変化する自然と北海道のマス釣り、
フライフィッシングの醍醐味や価値観(なぜ、こんな面倒な釣りをするのか問題)
キャンプの癒しや人との交流の大切さ、、、と具体的な内容です。
(初夏、マッチングザハッチのシーンより)
第二章初夏の第一節は完全書下ろしでしたが、実はもう倍くらいの内容にしたかったところです。というのも、いま、ボクがガイドサービスで提供する釣りが、多くのゲストにとって一番おもしろいと感じてもらえる内容になっています。
本の随所にも、『体感』が体の記憶に刻まれることの、意味深さを強調しました。
その「体感」を文章で説明するのは難しいの一言につきます。
もちろん、単に説明や体験談を書くことは可能です。
ですが、体に残るとはどういうことなのか、文章で示したとして、
それは理解してもらえるものなのか、常に葛藤と繰り返し繰り返し推敲を重ねまして、
なんとか伝わる内容になっているかなと思っています。
フッキングした時に伝わる、ブルブルだったり、グワングワンだったり、
ギャーッ!と悲鳴を上げるような疾走だったり、ですね。
実際には、百聞は一体験に如かず。
体で感じるというのは、まさに体験した人のみが感じられるもの。
それゆえに、表現のさらなるレベルに達するには…
と限界を感じたところです。
なんといいますか、上記のような普通の表現ではあるのですけどね。
(イメージPH「マスは賢い」より)
こんな大きなマスが大口を開けて、小さな虫を食う姿を見せられたら…。
同じところに、同じようなフライを投げさえすれば、
その大マスは騙されて、釣り人は歓喜のファイトを享受できる……はず。
言葉にすると非常に簡単ですが、そう簡単にはいかないのですね。
投げたフライが、直前でラインに引っ張られて、魚がそれに気づくとか。
風にあおられて、そもそも狙ったところに落とせないとか。
その目の前で繰り広げられる小さな世界は、
しかし、体験した釣り人の心を掴んで離さない。
たぶん、一生もの。
釣り人は、自分の主体で、あの魚を釣りに行こう!と思うが、
実のところ、魚に、釣りそのものに
呼び出されているに過ぎない…
これが生態心理学でいう「アフォーダンス」という概念。
釣り人とマス、釣り場と釣り人、
両者の関係をうまく表現するには、この方が適切なのではないか?
と考えてきた表現方法でした。
ちょっと分かりにくいですよね。
ところで、今回の本でテーマにした内容は、
これまでの30年、自分の体験した釣りを、ガイドサービスで体験してもらう
と言うビジネスを通じて、お客が増え、そこに価値を感じる人が
実はかなり多いという発見から、自信を深めたことに由来しています。
実のところ、昨年の秋に出版社から依頼が来たときは、まさにフィッシングガイドにまつわるテーマにしてほしいとのことでした。それなら、ボクだけではなく、何人かの信頼できるガイド仲間や先人がいるので、彼らから読者が得られる核心についても記したいとの思いで、そちらは延期させてもらい、今回は「北海道の鱒釣り」の続編的なものになりました。
釣りには、どこまでいっても個人の体験の世界があります。
その深淵は、個人間の分断が深まった現代人が、一人で進んで行く果てに見るものです。
いわば『救い』といえるものでもあります。
そしてそれと同時に、人とのかかわりの中で見えてくる世界もあるのです。
どちらの効能もある。それがこの遊びの素晴らしさ。
その中で得られた経験は、同じような経験を持つ仲間と
より深く共有できるものでもあります。
共有する必要がないと思う人もいるでしょう。
趣味なので自己満足でOKだと、ボクもずっとそう思ってきました。
釣りとしてはそれで確かに問題はないのですが、
一人の人間として問題が出てくることに、
年を重ねてから気が付いてきました。
それもガイドをするようになって、明確に理解できるようになったわけです。
それが、20年以上も北海道と世界中の辺境を、たった一人で何カ月も釣り歩いてきたボク自身の成果だったと感じるところです。人に頼らず、一人で金を稼ぎ、そのささやかな釣りキャンプの世界で見た地平は、多くの場合一人でしたが、だからこそ、人の温かみや仲間との共有が、大いなる幸福に感じさせてくれるのだと、教えてくれるのでした。
文末にその体験を載せることにしたわけですが、実は当初の計画では120ページでも収まらないほどのボリュームがありました。
96年頃の週間釣りニュース(関東版)から始まり、FlyFisher誌では、13年に渡って海外連載を続けたので、ベースになるストーリーは膨大、写真もリアルものが数千枚ありました。どう手を付けていこうか、、、。
この続きは、また次回か、次々回のレポートで。 (続く)
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